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ソーシャルワーカー(社会福祉士、精神保健福祉士)の養成課程には、機関・事業所で現場実習を行うことが定められています。
学生は実習生として「何もできない」と感じたり、自分が迷惑をかけているのではないかと悩むときがあります。
出会った人との関係を真摯に考えたり、学生として学ぶ立場を自覚しながら戸惑ったり、考えさせてもらえる時間は大事だと思います。
180時間(5週間弱)や240時間で、何か実際に出来るようになるのは誰でも難しいでしょう。では、こう考えてはどうでしょうか。
いま、目の前の人からもらった経験は、これから出会う人にいずれお返しよう。
お返しできる相手は、お世話になった人(実習先で出会った利用者)ではなかったとしても、次に出会う人に自分ができることを精いっぱいするつもりだ。
そう考えれば、いまの学びに集中できるし、実際に恩返しをする機会が待っていると思うのです。
きっと実習先の指導者も、誰かにもらった恩を、あなたに返しているだけかもしれません。
出会った人との二者関係だけでなく、社会のなかのつながりをイメージしてみる。
それが実習生だけでなく、対人援助の仕事を始めた人たちにとっても、仕事を豊かにする手助けになります。
自分のことを大事にしてもらった経験がある、とくに声をあげなくても当たり前の生活ができた、それは身近な人をはじめ、自分が享受してきた恩なのだろうと私は思います。
こんどは、次の人にお返しする。そうするのが自然という感覚が、いま社会的に弱い立場に置かれた人の「権利をまもる」というソーシャルワーカーの視点と重なります。
キャサリン・ライアン・ハイドは小説『ペイ・フォワード 可能の王国』を執筆し、2000年には映画化されました。
親切の輪を広げていくソーシャルアクションが描かれています。好きな作品の一つです。