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「ほんとう」を手放すのは不安だけど、楽になりたい

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前回、「ほんとう」が見えないのは専門職も同じと書きました。分からないから良いのです。私にとっては拠り所です。自分が正しくない可能性があるから「相手にとって」を考えることができるし、現実がより良くなっていくと信じています。

問題があるとしたら、自分が「ほんとう」の中にいないと不安になることです。ざわつく気持ちはどこから来るのでしょう。もし「ほんとう」があるとしても、自分が「ほんとう」の側にいると主張する必要があるのでしょうか。

「人と比べない」「ありのままの肯定」と理念に掲げる事業所が、神奈川県秦野市にあります。

社会福祉法人ビーハッピー – みのりの家

私は、この実践を知らなければ「人と比べないで尊重すること」の意味を、きちんと考えようとしなかったと思います。

「人と比べない」「ありのまま」から受ける印象は穏やかで、でも現実味のない理想にも聞こえるし、その通り実行できるなんて思えない。こんな感想をもつ人もいるでしょう。この理念となった経緯を伺って、私は圧倒されました。極限の厳しい状況のなかで「ここ」に行き着いたのだと思いました。

障害が重度で強度行動障害がある、または重複していて行き場がない人との実践から生まれた理念でした。援助者が「ほんとう」を知っているなんて生易しい状況ではなく、当事者の生き様が「ほんとう」でないと、道が拓かれなかったのではないかと想像します。

私が「ほんとう」を知らない側にいると受けいれ、「ほんとう」なんて無くてもいいと手放したのは、そうした方が楽しい世界になるからです。私自身も生きていて楽ですし、当事者の「ほんとう」に導かれる余白も生まれます。

あわよくば自分だけは「正しい」と思いたい感覚に気づいたとき、「相手にとって」を少しも考えていない自分がいました。それはもう嫌です。

「ほんとう」を手放す瞬間だけは少し怖いかもしれません。不安からの解放感が、背中を押してくれるはずです。

自然のなかを歩くと、「ほんとう」なんてどこにもなくても、気持ちがいいものです。

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